用事があって、裁判所に初めて来た。帰り際に小さな資料室を見つけて覗いてみると、明治時代に作られた法服や、法律にまつわる古典(モンテスキューの『法の精神』が印象に残っている)などが展示されていて、貴重なものを見ることができた。
襟と胸に施された唐草模様の刺繍が美しい。明治政府が近代の法律制度を整備する過程で、法廷で着用する制服が導入された。制服を導入するにあたって、ヨーロッパ諸国で古くから使われてきたガウン型の法服(Court dress)が参考にされ、これに倣って日本でも法服が作られた。
黒を基調としたこのデザインは、国学者で東京美術学校の和文・歴史教員であった黒川真頼により考案されたもので、聖徳太子像が着用していた古代官服を想起させる。
白色の刺繍のものが弁護士、赤色は検事の制服。刺繍の色で官職、桐の個数で裁判所の等級を区別している。
- 判事:刺繍は紫。桐は大審院判事が7個、控訴院が5個、地方裁判所と区裁判所が3個。
- 検事:刺繍は緋色。桐の数は判事と同じ。
- 書記:刺繍は襟に深緑の唐草模様のみ。
- 弁護士:刺繍は白の唐草模様のみ。
ギリシャ神話に出てくる、天の神ウーラノスと大地の女神ガイアとの間に生まれた娘であるテミスの像。テミスはギリシャ語で「安固、不動」「自然の法則」といった意味。これが転じて「掟(おきて)」「法」を意味するようになったことから、法の女神と称されるようになった。
テミスの像から浮かび上がってくる疑問を読み解くと、法とは何かを深く考えさせられる。テミスの左手には天秤、右手には剣、この物たちが意味するものは何か。そして、テミスはなぜ目隠しをしているのか。
まず天秤は法の世界がどんな世界かを言い表している。すなわち、法の世界では、当事者の言い分を聞き、どちらの言い分が合理的かをルールに従って判断する必要があるということ。暴力が力を振るう世界では、人々を恐怖によって支配する。権威主義の世界では、人々は名誉や地位、お金といったものに媚びへつらう。法の世界はそのどちらにも属さず、定められたルールに従って合理的な判断がなされる世界である。
剣は、法の世界では下された判決には強制力が伴うことを表している。当事者は判決に従わねばならず、従わない場合は時に罰を受けることもある。この点で、判決は強制力のない道徳の本質とは異なっている。
そして、なぜテミスは目隠しをしているのか。それは物事の審判には、目で見える情報に惑わされず、公正に判断を下すことが求められるからだ。ここで「目にみえる」ものとは、私的な事情であったり、客観性を欠いた物の見方。私たちは日々直面する情報に流されて、つい感情的になってしまったり、自分に有利な結末へ導くように働きかけたりすることはないだろうか。正しく生きるとは何か、正義とは何か、法の世界の考え方は、私たちの日常での振る舞い方にも通ずるものがあるのではないだろうか。
裁判所の用事が思ったより早く済んだので、瑞鳳殿に行ってみることにした。裁判所から歩いて二十分弱の距離である。
学生時代に何度か来たことがあるが、瑞鳳殿に来るのは多分四、五年振りくらい。街中から少し離れるだけで、こういう自然豊かな場所がたくさんあるのは、この街の良いところ。
仙台藩祖伊達政宗公の霊屋である瑞鳳殿は、桃山文化の豪華絢爛な廟建築が特徴だ。第二次世界大戦で惜しくも焼失してしまい、現在の建築は1979(昭和54)年に再建されたもの。
瑞鳳殿本殿が生憎の修復工事で建物の全貌を見ることができなかったが、ご本尊とも言うべき伊達政宗公の御木像を、偶然この目で見ることができたのは運が良かったと思う。
二代藩主伊達忠宗公の霊屋である感仙殿。黒地に金の装飾が映え、真ん中に伊達家の竹に雀の家紋が施されている。大名の品格を感じさせる。
境内には杉の木が生い茂っており、一般的な神社とはまた違った凛とした空気に包まれている。
瑞鳳殿がある一帯の地域は、霊屋下(おたまやした)という地名で呼ばれている。仙台の街中に戻る前に少しこの霊屋下周辺を散策してみることに。
瑞鳳殿から歩いてすぐの場所にある気になってたパン屋さん「BABEL858」。ヨーロッパの石造りを思わせる建物の佇まいが印象的。
建物の中に入ってみると、アンティーク調の内装も素敵。絵本の中に入ったみたい。カヌレ、タルト、マフィン、美術品のような煌びやかなパンが並ぶ。彩鮮やかなお惣菜パンも美味しそう。
中にはイートインのスペースもある。平日だったので席は空いていた。今回は、ラズベリーのデニッシュ、キャラメルナッツのマフィン、合鴨のサンド、ソーセージパンの四種類のパンをお持ち帰りすることに。有料のレジ袋をお願いしたら、パープル色のショッピングバッグに入れてくれた。
一番町の方へ戻ってきた。ランチはずっと食べたかった「肉源」という焼肉屋さんで。贅沢焼肉ランチをチョイス、千五百円くらい。たくさん歩いた後だったから、より一層美味しく感じた。
フォーラスのスタバで食後のコーヒータイム。今日からバレンタインのメニューが始まっていて、今度はフォンダンショコラのラテをオーダーしてみよう。そろそろバレンタインのチョコレートが百貨店で並び始める季節だ。