濡れた折り畳み傘を片手に路線バスへ乗り込む。雨の京都は二回目だ。
午前中に大山崎まで足を伸ばし美術館へ行ってきたが、意外と早く観終えてしまったので手持ち無沙汰になった。市内に戻ってきて、とりあえずどこかで昼食を済ませようと思い河原町の路地裏を歩いてみたが、目ぼしい店も見つからないのでそのまま次の目的地の圓光寺に向かうことにした。
バスの車内にはまばらに人がいたが、真ん中くらいの一人席が空いていたのでそこに座った。圓光寺へ向かう五番線のバスは東山や神宮道を経由した後白川通りをずっと北上してゆく。途中岡崎公園前で動物園帰りと思われる家族連れが車内に乗車してきた。合羽を被った四歳くらいの子供を連れている。
移動中はずっと窓からぼんやりと外を眺めていた。三十分くらい経っただろうか、一乗寺下り松町というバス停で降りると、雨は小雨になっていた。
バス停を降りてすぐ向かい側にファミリーマートが見え、そういや以前詩仙堂を訪れた際も、長い坂道の奥にいくつか寺院が点在していたなぁと思い出した。電柱に掲げられた小さな案内を頼りに十分ほど歩いて行くと「瑞巌山 圓光寺」の文字の木製看板が下げられた道場の門が見えた。
山門を通り参道を登ってゆくと、まず目に留まったのは「奔龍庭」と呼ばれる枯山水だ。この庭園は2013年に造られたものであるが、庭には雲海に見立てられた白砂が渦巻き模様で描かれ、天空を自在に奔る龍が石組で表されている。渦が大きなうねりを見せ、荒く切り立った石柱がずっしりと構えている様子はなんとも迫力がある。
その奥には「十牛之庭」が佇む。近世初期に造られた池泉回遊式庭園(池の周りを一周しながら鑑賞する仕組みの庭園)だが、本堂の中から額縁庭園を楽しむことができる。四月下旬、早くも春が終わりを告げようとしており、園内には青々とした紅葉の葉が茂っている。雨空の下、切り取られた景色の中を、静寂に包まれた時がゆったりと流れ続けている。
庭園の中の小さな竹林を通ってみると、一つ二つと竹の子がひょっこりと地面から顔を出していた。
寺を後にし、帰りは電車で帰ろうと一乗寺駅の方まで歩いてみた。駅のホームで電車を待っていると、叡山電車というレトロなワンマン列車がやってきた。出町柳で京阪電車に乗り換えて、祇園で降りるといつものように通りは人で溢れていた。
お腹が空いた。お団子を買って帰って、ホテルで食べよう。花見小路のどこかにお店があったはずだ。